バード・ウォッチング No

大人の生き方について思うこと

H29,4、

日野青い鳥・理事 村瀬精二

 就労継続事業を利用する方々の1年間の振り返りに同席した。改めて青い鳥のお一人おひとりの気持ちに触れて、生きづらさを抱えながらも大人のプライドを持って努力している姿に感心させられた。

  • 「私はこうしたい」

 ストレートである。「給料を稼ぎたい」「稼いで母親を助けたい」「売店、頑張りたい」「10年後、いい先輩になる」「(単価の高い)高幡店で働きたい」「お金を自由に使いたい」等々、“働いて、給料を得て、お金を使って、役に立ちたい”こんな働く生活の循環が大人のプライドを堅持しているのであろう。これが「本人の要望」であり、端的明快で、とっても目的的な目標を持ていることに頷けた。

  • 如才ない働きぶり

 高幡店の大掃除の折、Aさんがボランタリーに応援に出てくれた。少し重い衣装ケースの出し入れ、指示を受けて、仲間として「重いよ」「力持ちだもんね」と励まされて気持ちよく動く。役に立っている自分を感じていることがよく伝わってくる。そこには、受け手効果の配慮も作用している。実際の働きぶり以上の評価をして、勇気づけていくことで働く力を発揮できるようになっていく。これがあっての就労支援であることも強く感じた。

初不動の時にもBさん、Cさんが半日、Dさんは一日顔を出してくれた。「ここで働いている」「自分の職場だから」との言葉がなんとも素敵に響いてきた。

  • 大人のプライドを思い描く

 想像していた以上に大人の歩みへと踏み出している姿にうれしくなった。やはり大人の充実感は今まで培ってきた力を発揮すること、人の役に立つ実感の中にあるのだ。子供ではないから、可愛がられて得られるのではないことを確認した思いである。

 ショップで働くEさんは、お客様から「勧めてくれてありがとう」と言われたことを嬉しそうに伝えてくる姿がある。Fさんは、後輩の戸惑いに「こうだよ」「大丈夫?」と思いやる姿が挙げられる。Gさんは、刺繍で「あの作品がほしい」と自分の手がけた品への注文を得て火がついたように取り組む姿に感動した。こうした小さなエピソードの中に、いろいろ課題はあるにしても張り合いを持っている姿が見出せる。周りから認められ、そんな自分に誇らしく思い、だんだんと大人らしさが成熟してくるのだろう。さらに次の大人の歩みへのステップアップを楽しみに見守りたい。

  • 大人になっていく道筋

 折節に大人になったなと感じる出来事にしばしば出会う。年齢で区切るのではなく、能力で判断するのでもない。周りを巻き込みながらも、自分都合ではなく、支えられて折り合いをつけていく暮らしぶりに出会うときの感慨である。自分一人では思いが勝ってしまうことが多い。でも、気持ちを汲み取り、肯定的な付き合い方のもとでいつもの素直な心持ちを引き出すことができ、折り合える現実になる。周りから注ぎ込まれるもので心のありようが変わってくる。支えられて大人になる道筋からは、大事にされているとの実感が大人の歩みの土壌になる。